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祇園 さゞ木の舞台

祇園 さゝ木の舞台

店の時間と空気を閉じ込んだ本

料理を記録するのではない。

「祇園 さゝ木」という素晴らしい舞台を一冊の本に。
飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を集め、予約困難店として知られていた「祇園 さゝ木」。
料理本をつくる企画が出版社と大将・佐々木さんの間で始まり、カメラマンも決定。次の課題は、本の装丁だけではなく、どのような書籍にするのか、その世界観をどうつくり上げるのかという、書籍全体のディレクションでした。広告代理店やデザイナーなどとの折衝を経て、レガングループにご依頼をいただきました。
私たちが最初に考えたのは、「料理をどう美しく撮るか」ではありません。
「祇園 さゝ木という店の魅力を、一冊の本でどう体験してもらうか。」
料理、器、季節、カウンター、佐々木さんの人柄。そして、その場に流れる時間。
それらをどう取材し、どう撮影し、どのような編集とデザインで一冊にまとめるのか。幾度も話し合いながら、完成する本のゴールイメージを少しずつ共有していきました。一年では足りない。料理の「旬」を追いかける。料理は、季節とともにあります。
そのため、一度にすべてを撮影するのではなく、毎月のように店を訪れ、季節ごとの料理と素材を記録していくことにしました。
撮影日と料理の旬、素材の仕入れのタイミングがうまく重ならないこともあり、結果として撮影期間は2年を超えることに。
撮影を繰り返し、カメラマン、編集、デザイン、出版社、そして佐々木さんとのチームとしての一体感も深まっていきました。
時には日本海までカニなどの素材の仕入れに同行し、取材と撮影を行うことも。料理を撮るだけではなく、その料理が生まれる背景まで知る。長い時間を共有したからこそ、一枚の写真や一つのページに、さゝ木らしい空気を込めることができました。
「本」ではなく、「祇園 さゝ木のカウンター」をつくる。撮影がほぼ終了し、いよいよ本の中身を詰めていく段階へ。

祇園 さゞ木の舞台

料理写真、文章、構成、グラフィック、装丁

一つひとつが形になっていく一方で、装丁が決まった段階でも、どこか物足りなさが残りました。
そこで考えたのが、本そのものを「祇園 さゝ木」の体験にすること。
初版の一部を特装版として桐箱に収め、その中に料理本だけではなく、箸置き、お箸、膝掛けまで収納。
さらに料理本は透明アクリルケースに収め、まるで「さゝ木」のカウンター席を、そのまま持ち帰るような構成にしました。
本を開く前から、店の世界へ入っていく。料理を読むだけではなく、手に取り、触れ、眺めることで「さゝ木」を感じてもらう。
それは、料理本というジャンルを超えて、一冊の本をひとつの体験としてデザインする試みでした。

祇園 さゞ木の舞台

世界に届いた、「一冊のさゝ木」

こうして完成した「祇園 さゝ木」の料理本。
その特装版は、フランスで開催された「グルマン世界料理本大賞2011」においてグランプリを受賞しました。
2年以上にわたって季節を追い、料理と人に向き合い、最後には本そのものを「さゝ木」という舞台として仕立てる。
料理の価値を、料理だけに閉じ込めない。
私たちが考えるデザインとは、目に見えるものを整えることだけではなく、そのものが持つ世界観や価値を、別のカタチへと翻訳すること。「祇園 さゝ木」の料理を、一冊の本という新しい舞台へ。
その舞台づくりまでを、私たちはデザインしました。

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